Dolcissima Mia Vita

A Thing of Beauty is a Joy Forever

2022-01-01から1年間の記事一覧

アリス・リヴァ『みつばちの平和』を読む

アリス・リヴァ『みつばちの平和』(正田靖子訳)読みました。男は破壊するばかりで暴力しか知らず、後片付けはいつも女の役目になってしまうこの世界への異議が静かに語られます。スペイン内戦の時代、迫りくる世界戦争を予感しつつ『みつばちの平和』を書…

「よろしゅうおあがり」という表現

関東よりも関西に住んだ年月のほうが長いとはいえ、生まれが関東なので、いまでも関西は異郷のような感じがしている。その関西に住んで初めて知ったのは「食べる」を意味する「呼ばれる」というふしぎな表現。 「せっかくやし、夕飯たべていき」「おおきに、…

反ルッキズム文学としての『春琴抄』

外見の美醜にとらわれるルッキズムからほんとうに自由になるためには、人は盲目にならなければならないのだろうか。 文字通り盲目でなくても、たとえばオーケストラ団員のオーディションで、カーテンなどで仕切って演奏を審査する例を聞いたことがある。見え…

人間に葉緑素があるならば

人間が葉緑素をもつようになる未来を夢見てみる。はじめは体が緑色なのに驚いても、じきに慣れる。光と空気があれば生きていけるのならば、もはや飢餓は存在せず、1ミリも畑を耕す必要もない。労働から解放されて、緑の肌を寄せ合って遊び暮らす未来は、悪く…

父母から自由になること 韓国ドラマ『シスターズ』感想

親の支配から自らを解放する、勇気ある女性たちの群像劇だった。三姉妹の父は最後まで登場せず、母の存在感も薄い。父母なしで、姉妹で力を合わせて生きていく。イネとヒョリンの出国も、イネにとっては、親代わりに愛情を押しつけてくる姉たちからの、ヒョ…

佐渡裕のブルックナー6番

離れて住む息子が、仕事の都合で行けなくなったからと、音楽会の切符を。ハイドンとブルックナーというプログラムは大好物です。親子で音楽の好みが似ているねと、うちの人たちにからかわれました。 ハイドン 交響曲第90番ブルックナー 交響曲第6番指揮は佐…

「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」を見た

男性の出演者の中でただひとり男らしくない(褒めています)ウ・ヨンウの父親が好きだった。 自閉症の子どもをシングルファーザーとして育てる。なんてすばらしい父親。どんなに大変だっただろう。4歳まで一言も発しなかった子が初めて話し始めたときの喜び…

クセナキス生誕100年

ことしはヤニス・クセナキス Iannis Xenakis (1922~2001) の生誕100年。 主夫をお休みして、いずみシンフォニエッタ大阪のクセナキス・プログラムを聴きに行く。 生のクセナキスはやっぱり圧倒的で、打ちのめされた。 空襲警報が鳴り、爆撃機が急降下してき…

『椿の花咲く頃』を見た

2019年の韓国ドラマ『椿の花咲く頃』をNetflix で見た。 餃子は蒸気だけでもゆっくり火が通る、それと同じように、ゆっくりと恋を温めましょう、というドンベクのことばどおり、恋はゆっくりと育ち、全20話のうちようやく第9話でファーストキス、最後まで「…

映画「はちどり」をみた

キム・ボラ監督の映画「はちどり」(2018年)をアマゾンプライムで見た。 家に帰ってきて呼び鈴を鳴らしても誰も出てこなくて、開かないドアをたたいて「おかあさん」と叫ぶ冒頭の場面、それに似たような場面が中盤にもあって、町で母親に似た人を見かけて「…

タラス・シェウチェンコの詩

タラス・シェウチェンコ(Тара́с Григо́рович Шевче́нко, 1814~61)は、ウクライナ文学の始祖とされる詩人。ロシア語式の発音では「シェフチェンコ」になる。その詩「遺書」Заповiт を読む。はじめにフランス語訳、つづいてウクライナ語原文、さいごに日本語…

大阪フィル定期演奏会を聴いた

ブルックナーのなかでも特別に好きな第5交響曲を、尾高忠明と大阪フィルが演奏すると聞き、主夫のお休みをもらって聴きに行ってきました。会場のフェスティバルホール、改築後に行くのは初めて。残響が少なくてクリアに聴こえる印象。この曲の出だし、低弦の…

ドビュッシー「ペレアスとメリザンド」

たいていのオペラは歌詞があまりよく聴きとれない。音を長く引き延ばしたりころころところがしたりして、言葉をもてあそぶばかりで、言葉そのものが聴こえてこない。ワーグナー以降になると管弦楽が巨大化して大音量のために声そのものがかき消されてしまう…

2021年はこんな本を読んだ

2021年に読んだ本から印象に残ったものを何冊か ピエール・クラストル 『国家をもたぬよう社会は努めてきた』ノブレス・オブリージュという言葉の本当の意味は、首長が民に対して負債をもつということなのかもしれない。民が首長に負債を持ち貢納を納める国…