Cinema
配信で韓国ドラマ『君の声が聞こえる 너의 목소리가 들려』(2013)を見た。 ああ、久しぶりにいいドラマを見たな、と今でも余韻に浸っている。少し古い作品なのだけれど、まったく古さを感じない。構成がうまくて、次はどうなるか期待を持たせる終わり方で…
台湾のドラマ『最初の花の香り(第一次遇見花香的那刻/Fragrance of the First Flower)』を見た。監督はエンジェル・テン(Angel Teng 鄧依涵)、1990年生まれとのこと。 台湾のクィアの映画・ドラマの水準の高さは、前にネトフリで見た『此時此刻 (At the…
ヨム・ジョンア、パク・へジュン他出演『初、恋のために 첫, 사랑을 위하여/Love, Take Two』を見る。 この作品で元夫婦を演じるパク・へジュンとオ・ナラは『マイ・ディア・ミスター』では元恋人同士だったし、村長夫婦も『マイディア』に出ていたし、ヒロ…
京都シネマで封切られたばかりの映画『ウナイ 透明な闇 PFAS 汚染に立ち向かう』を見てきた。 身近な環境汚染をめぐって、一人の女性のいてもたってもいられないような不安がもう一人の女性を触発し、そこから生まれた小さなドキュメンタリーがまた別の女性…
京都の出町座で映画『ラブ・イン・ザ・ビッグ・シティ』を見てきた。 異性愛の女性と同性愛の男性という、絶対に恋愛になりえない二人のルームシェア、その関係性は、例えばヘテロ男性二人の友情とはまた違って、互いの異質さに気づき、理解し合えないにもか…
空音央監督の『HAPPYEND』を見た。 この映画を作った人はまじめな人なんだろうな。出ている人物もみんな、校長や総理大臣も含めてまじめ。一人だけおちゃらけた生徒がいるけれど、それがみんなに波及せず、一人浮き上がっている。権力に抵抗するのはなにより…
井樫彩監督の撮る静謐で繊細な映像は、『真っ赤な星』を見たときに深い印象とともに忘れられないものとなったが、このたび見た『愛されなくても別に』でも、暴力的な場面もあるにもかかわらず、その印象は変わらない。たとえばごく近い距離から俳優の表情を…
三島有紀子監督の去年公開された映画『一月の声に歓びを刻め』を観た。 次女が幼いころ性暴力を受けたあと遺体で発見された洞爺湖岸に向かって、深い雪の中をよろめきながら、うめきながら歩き、「れいこ!辛かったな!お前は汚れてなんかいねえ!」と叫ぶマ…
2月19日 映画『コット、はじまりの夏』を見る。 こういう静かな映画が好き。アイルランドの田舎の豊かな緑と水、そこで静かに暮らす中年夫婦、そこに短い間預けられることになる無口な少女、3人で過ごす静かな時間、ずっと見続けていたくなる。 家では余計者…
2月17日 キム・セロンさんの訃報を聞いて、打ちひしがれている。心よりお悔やみ申し上げる。 あの激しくてせつない、ときには愛らしい演技をもう見られないと思うと残念。 生まれて初めて見た韓国映画が、キム・セロン&ペ・ドゥナ主演の『私の少女』で、それ…
2月12日 アンナ・ゼーガース『第七の十字架』読了。 収容所から7人の政治犯が脱走する。ある者は恐れから自首、ある者は途中で死に、ある者は逮捕される。最後まで逃げるのは誰か。巻頭の人物紹介でネタバレされてしまっているが、それでもその逃避行には心…
阪神淡路大震災30年の今年1月17日に封切られた映画『港に灯がともる』を、京都の出町座で見てきた。 ことばになる前のため息、うめき、あえぎ、泣きじゃくりながら話される、音節のさだかでないことば、意味をまとうまえの原初的な叫び、そのようなものが聞…
1月24日 ゆうべは真ん中の子の誕生日イブで、キッシュロレーヌを焼き、唐揚げを作って、ロゼワインで乾杯する。 生まれた日は冷たい風の吹く日で、予定日を過ぎてもなかなか生まれないお腹をかかえてお昼すぎまで店に立って仕事をしたあと、徒歩15分ほどの産…
1月17日 1585年に亡くなった先輩トマス・タリスを偲んでウィリアム・バードが作曲した「汝ら聖なるミューズよ」Ye sacred muses を聴いて、朝から涙ぐんでいた。Tallis is dead, and Music dies. というリフレインに深い悲しみがにじむ。 ちょうどこれより10…
心の底から静かに揺さぶられるほんとうにすばらしい物語。これだから韓国ドラマはやめられない。 最終話のお葬式の場面、これほど温かい気持ちになるお葬式は見たことがなかった。 ドンフン役のイ・ソンギュンの声は暖かく深みがあってセクシーで、人を安心…
『マディソン郡の橋』は、原著が話題になったころ翻訳で読み、その後原書でも読み、だいぶたってから映画を見、気に入ったので何度も見、原著を忘れかけていたので再読して、今ここ。原作と映画とずいぶん趣がちがっている。原作はロバートの独白、しかもし…
親の支配から自らを解放する、勇気ある女性たちの群像劇だった。三姉妹の父は最後まで登場せず、母の存在感も薄い。父母なしで、姉妹で力を合わせて生きていく。イネとヒョリンの出国も、イネにとっては、親代わりに愛情を押しつけてくる姉たちからの、ヒョ…
男性の出演者の中でただひとり男らしくない(褒めています)ウ・ヨンウの父親が好きだった。 自閉症の子どもをシングルファーザーとして育てる。なんてすばらしい父親。どんなに大変だっただろう。4歳まで一言も発しなかった子が初めて話し始めたときの喜び…
2019年の韓国ドラマ『椿の花咲く頃』をNetflix で見た。 餃子は蒸気だけでもゆっくり火が通る、それと同じように、ゆっくりと恋を温めましょう、というドンベクのことばどおり、恋はゆっくりと育ち、全20話のうちようやく第9話でファーストキス、最後まで「…
キム・ボラ監督の映画「はちどり」(2018年)をアマゾンプライムで見た。 家に帰ってきて呼び鈴を鳴らしても誰も出てこなくて、開かないドアをたたいて「おかあさん」と叫ぶ冒頭の場面、それに似たような場面が中盤にもあって、町で母親に似た人を見かけて「…
もとのタイトルは「アダム」映画の中で生れる男の子の名前です。 生まれたばかりの赤ちゃんがほんとうに愛情をこめて撮られていて、もうそれだけでうれしい映画。泣くばかりではなくて、くしゃみしたり、おならしたり、ちいさくうめいたり、赤ちゃんの出すい…
低予算で作った映画らしく、贅肉のないひきしまったシンプルな構成で、四人の男女の室内楽のような会話を中心に進む。たとえば音楽に、サビのフレーズやクライマックスのようなものを、音楽で「イク」ことを人は求めてしまいがちだけれども、他方では、クラ…
映画館で映画を見たのは何年ぶりだろうダニエル・アービッド監督「シンプルな情熱」見てきましたタイトルの Passion simple はもしかして単純過去 passé simple とかけているのかな現在とは切り離して過去の出来事を述べるフランス語の時制、単純過去開始数…
「田舎の日曜日」Un Dimanche à la Campagne という映画のことを教えてくださったのは阿部良雄先生。フランス象徴詩の講義の合間の雑談でした。「蓮實重彦などはけなしていますが、私は大好きです」と。雑談のときだけに見せる、含羞を帯びた笑顔で。下宿か…
映画「アイ・アム・オール・ガールズ」I Am All Girls を観た。 2021年、南アフリカの映画。ドノヴァン・マーシュ Donovan Marsh 監督。 コンテナに幽閉されていた子どもたちとジョディが対面する場面の長い沈黙が忘れがたい。どのようなことばも無力なとき…
どこの映画館も最大公約数の似たような映画ばかりで見たいと思う映画はほとんどなく レンタル屋さんも遠くてあまり利用せず そんなわけで映画をあまり見ない私ですが この映画はどうしても見たくて ネットでDVDを買って見たのでしした その理由はジュンパ・…