Dolcissima Mia Vita

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映画「その名にちなんで」

どこの映画館も最大公約数の似たような映画ばかりで見たいと思う映画はほとんどなく レンタル屋さんも遠くてあまり利用せず そんなわけで映画をあまり見ない私ですが

この映画はどうしても見たくて ネットでDVDを買って見たのでしした

その理由はジュンパ・ラヒリの原作に大きな感銘を受けたから

ベンガル出身で英語で書くこの小説家

長篇の『低地』短篇集の『停電の夜に』そして『その名にちなんで』

どれも素晴らしい作品です

 

『その名にちなんで』原題は The Namesake

名前についての物語

文学好きな父アショケがロシアの文豪ゴーゴリにちなんで息子をゴーゴリと名付け

その奇妙な名のために息子は友達からからかわれて自分の名前がきらいになり

ついに裁判所まで行って改名するところまでいくが

のちに父からその由来を聞いて 父の思いにじんとする

 

いっぽうアショケの妻アシマは伝統的なベンガルの文化の中で見合いによって結婚するが

彼女は夫の名前を呼んだことがない

夫の名前は秘め事のように黙すべきと考えみだりに口にしない

アシマの名前に宿る霊のようなものへの畏敬は 同じ東洋人として共感

大切な人であればこそ名前で呼ぶのを憚る

万葉集劈頭で雄略天皇が「名告らさね」といえばそれは求婚のことで 名前を呼ぶのは他人のプライバシーにずかずかとあがりこむこと

昔の中国人や日本人が複数の名を持ち本名をあまり使わなかったこと

ユダヤの伝統では神の名はみだりに口にすべきものではなかったこと

そんなことも思い合わせる

たとえば中学校の習いたての英語の時間に

‘Hi, Ken, how are you?” 

などという会話にどうしようもない居心地の悪さを感じるのは

〈他人の名前を気安く呼ぶ〉ことへの抵抗感によるのではないか

西洋人はそういう流儀かもしれないが

東洋人の物の考え方と根本的に相容れないのではないか

そんな風に思います

 

インドの映画は初めてでしたが 女たちのなんと華やかなこと

色とりどりのサリーを場面ごとに着まわすさまにうっとりします

結婚式の場面はお祭りみたい

友人や親族一同が花々を撒いて祝福してみんなで大騒ぎ

アシマ役のタッブーがお見合いのときにこっそりアショケの靴に足を入れる場面もなまめかしくてすてき

タッブーはほんとうにきれいなひとでした

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