Dolcissima Mia Vita

A Thing of Beauty is a Joy Forever

2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

菅原百合絵『たましひの薄衣』を読む

人死にて言語(ラング)絶えたるのちの世も風に言の葉そよぎてをらむ 歌集の終り近くに置かれた、「禁色」と題された連作のなかの一首である。 源氏物語の柏木の禁断の恋をめぐる歌ではじまり、禁書目録、猥褻本の著者の追放、サヴォナローラの焚書、炎に包…

桜の花の唯一無二であることについて

桜の花を見るとき、いま目の前に咲いている桜だけではなくて、これまで生きてきたなかで見た無数の桜が、見た場所や情景や、一緒に見た人とともに、意識していてもしていなくても、まるで倍音のように、あるいは不可視の光のように同時にそこに重ねられ、過…