映画「アイ・アム・オール・ガールズ」I Am All Girls を観た。
2021年、南アフリカの映画。ドノヴァン・マーシュ Donovan Marsh 監督。
コンテナに幽閉されていた子どもたちとジョディが対面する場面の長い沈黙が忘れがたい。どのようなことばも無力なとき、ただ見つめあうことしかできない。コンテナの子どもたちを、あるいは庭のブランコに孤独にすわる少女を見つめるジョディのまなざしは悲しみと愛にあふれている。
その一方、自らも人身売買と虐待の被害者であるントンビ Ntombiは、その名前が「すべての少女 all girls」を意味することからも推察されるように、誘拐され虐待され消されたすべての少女を代表して行う復讐への使命感に生き、そのためには、法をおかすこともためらわない。
ントンビとジョディの友情を通じて連帯感が生れ、ついにジョディも法律の枠を超えた行動をとるまでの過程に考えさせられる。ことばも法律も警察も無力なとき、あのような行動しかありえなかったのかもしれない。
実話に基づいているとのこと。阪本順治監督の「闇の子供たち」(2008)と似た題材だが、同じくらい、あるいはそれ以上の衝撃だった。
おぞましいペドフィリアを扱っているが、きわどい場面は慎重に避けられていて、作り手の、子どもたちへの敬意が感じられる。