Dolcissima Mia Vita

A Thing of Beauty is a Joy Forever

人間に葉緑素があるならば

人間が葉緑素をもつようになる未来を夢見てみる。はじめは体が緑色なのに驚いても、じきに慣れる。光と空気があれば生きていけるのならば、もはや飢餓は存在せず、1ミリも畑を耕す必要もない。労働から解放されて、緑の肌を寄せ合って遊び暮らす未来は、悪くないかもしれない。

世界は人間なしで始まったし、人間なしで終るだろうとレヴィ=ストロースは述べたが、人間以前から存在し人間以後も存在するものの一つは植物で、それは生物としての植物の優越を示しているだろう。チェルノブイリ(チョルノーブィリ)や福島の立入禁止地域における植物の繁茂もそれを裏書きする。

春になって薔薇が蔓を伸ばし、夕暮れに星が増えてゆくように花が次々と咲く庭を見ていると、植物もまた歌を歌っているのではないかと思うことがある。我々人間の感覚器官があまりにも鈍いので、それが聴こえないだけのこと。