いちどだけ生で聴いたことがありました。昭和女子大学の人見記念講堂で、予定されていたのはシェーンベルクの「期待」だったのが変更されて、一般的な歌曲のプログラムになったのでした。
どんな曲を歌ったか、もうすっかり忘れてしまったけれど、アンコールの黒人霊歌がノリノリのスイングで、からだを揺らしながら歌っていたのをよく覚えています。
堂々とした体格で、黒い肌に華やかな色の衣裳がよく合って、舞台に映える人でしたね。
初めて聴いたのは小沢とボストン響とのシェーンベルク「グレの歌」のLPでのトーヴェでした。分厚いオーケストラの響きをやすやすとつきぬけて通る豊麗な声にたちまち魅せられてしまいました。
あとよく覚えているのがテンシュテットとロンドン・フィルとのブラームスのドイツ・レクイエムのCDのなかの Ihr habt nun Traurigkeit.
全曲のなかで唯一のソプラノソロの曲を、時間が止まるのではないかと思うような遅いテンポで、慰めるように語りかけるように歌う。
ト長調で進んできた音楽が不意に遠い変ロ長調に転じる中間部。まるで別の世界に連れていかれるように。
ささやくような合唱とのひびきあい。
この1曲ばかりエンドレスリピートで聴いていた20代なかばの孤独な日々を思い出す。
YouTubeに音源があったのでのせておきますね。
ジェシーさん、ありがとうございました。安らかに