みなべのうみ 十二首
あめつちにあまねくひかり満つるあさ春告げ鳥の初音はつかに
鳥かげのよぎるつかのま見しひとのおもかげゆゑにながくなげきつ
をとめごは横笛ふけりあづさゆみ春をよろこぶ小鳥のごとく
伐採をまつ森の樹にけさもまた鳥の来鳴きてわかばもえいづ
紀伊のくにのみなべのうみの浜千鳥あとものこさず世をのがればや
夏木立ふみわけいればこずゑなる一羽の鳥のこゑなりやまず
あさなあさな来ては世界のねぢをまく鳥のすがたはみえないままに
星ひとつへればひとつの鳥のこゑふえつつ夏の夜の明けゆく
彼岸よりきたりし霊か鳥一羽さへづりやまぬ秋分のあさ
不発弾遠巻きにしてひと絶えしまひるまのまち鳥なきわたる
須磨のうみほがらほがらにあけゆけばかよふ千鳥の声ぞかなしき
呼び鈴をおしてまつ間の門前に冬の日の照り冬の鳥鳴く