短歌連作「遠景の少年」十二首
髪二尺ばさりときつて少年とみまがふきみにあふ新学期
プール掃除のいつかあそびとなりし子らしぶきあがりてわらひさざめき
変声をむかへぬままに生涯ををへにし君の通夜の花冷え
狷介な雄のけもののにほひして走りすぎにし体操少年
ぬばたまの髪ふりほどく門のそと校則といふほだしをよそに
遠景の少年の曳くくるまより白線いづるなつのグラウンド
切れぎれに運動会のかけごゑのとほくきこゆる六月の風
髪ながき乙女と生まれしろがねのフルートに吹くアメージンググレース
バス酔ひのくすりひとつぶのみこみて朝をかけだす遠足少女
懸垂にたへかね落つる校庭に鉄のにほひのわがたなごころ
なぎ倒してもふりかへらずにかけぬける陸上の子の髪なびきつつ