Dolcissima Mia Vita

A Thing of Beauty is a Joy Forever

ボードレール「夕べの諧調」

Voici venir les temps où vibrant sur sa tige
Chaque fleur s'évapore ainsi qu'un encensoir;
Les sons et les parfums tournent dans l'air du soir;
Valse mélancolique et langoureux vertige!

時は来て 茎にふるえつつ

花々は香炉のように蒸発する

音と香りは夕べの空気を舞い

ゆううつなワルツとものういめまい

 

ボードレール Charles Baudelaire の詩「夕べの諧調」Harmonie du Soir の最初のスタンザを自分なりに訳してみました

何度も読んでいる詩ですが 今日読んで立ち止まったのは

 s'évapore という単語 

「蒸発する」という意味で 花の香りが空中に蒸散すること

(英訳のひとつは Every flower exhales perfume like a censer

と訳しています)

しかし同時に 花そのものが気化して消えてなくなるように読めないこともない

香炉の香が自らを焼き尽くしつつ芳香を放ち 最後には灰だけしか残らないように

花はもはやその姿を喪って香りだけの存在となり

視覚の不鮮明になる夕闇の聴覚と嗅覚だけの世界に

音と香りがたゆたう