「愛染坂」十二首 夏の季節のために
鼻緒よりペディキュアの爪ひからせて祭り太鼓にいそぐをとめご
姿見にすがたうつしてなつゆかたくるりまはれば花咲くごとく
子のためにアイロンあつる夏ゆかたせみの声降るまつりのあさに
をさなごのたべのこしたるわたあめのあはくはかなく祭りの太鼓
げたならしなつまつりよりかへりきぬゆかたの子らは金魚をさげて
こぞのゆかた膝丈となり姉のゆかた借りてぞいにしなつのまつりに
愛染坂のぼりつめればせみしぐれゆかたゆきかふなつまつりかな
夏 ひぐれ くちなしのはな 遠花火 わがなつかしき形而下のもの
終演の拍手のごとくせみしぐれなつのさかりをたたへてやまず
なによりの甘露なりけり夏の日の井戸のふかきにひやせる西瓜
西のかたはるか花火かかみなりかひくくとどろく夏のゆふぐれ
子どもらの背たけことなる水筒に麦茶みたしむせみのなくあさ