Dolcissima Mia Vita

A Thing of Beauty is a Joy Forever

小泉文夫『音楽の根源にあるもの』を読む

「私たちが音楽的と考えていることが、ほんとうは人間の不幸の始まりかもしれない」

北極圏の鯨を逐うエスキモーとカリブーという馴鹿を逐うエスキモーの音楽の違いに関して

前者はリズムよく声をそろえるが

後者はリズム感に乏しいバラバラの歌

そこから著者が考えたのは

鯨を捕るのは大勢の共同作業なしには成り立たなかったから声を合わせて歌う必要があった

鹿を逐うのは一人でもできることだから他人と和する必要もなかった

ということ

濁った音や不協和音を排除した規律と命令と秩序のもとで初めて美しい音楽が生まれる

これは本当に逆説的なこと

何かが美しいと感じられたとき 人はすでに騙されているのかもしれない

元号の英訳が beautiful harmony というので浮かれている場合だろうか

命令のもとで初めて調和が生まれるのだから