Dolcissima Mia Vita

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「七日間ブックカバーチャレンジ」やってみました

インスタグラムで #7日間ブックカバーチャレンジ というものに声をかけていただいたのでやってみました

 

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naoya matsumoto on Instagram: “Voici des fruits, des fleurs, des feuilles et des branches Et puis voici mon cœur qui ne bat que pour vous. (Verlaine, "Green")…”

Voici des fruits, des fleurs, des feuilles et des branches
Et puis voici mon cœur qui ne bat que pour vous.
(Verlaine, "Green")
ほらここに、くだもの、花束、葉っぱと枝と
そしてこれは僕の心臓、君のためだけに脈打つ

#7日間ブックカバーチャレンジ
1日目はヴェルレーヌの詩集(La Bonne Chanson, Sagesse) です。

大学に入学してまもないころ、クラブ勧誘でにぎやかな構内で、ある音楽系のサークルに足を止めて話を聞いているとき、黄色い表紙のフランス語の詩集を静かに読んでいる、細面で大人びた人がいて、あとからわかったのですがそれは同じ学科の先輩で、あ、ヴェルレーヌ!と言ったら、好きなんだね、じゃあこれあげるよ、とその場でくださったのがこの本。
表紙も傷んでページも黄ばんでしまっても、いまだに手放せない一冊です。
#7daysbookcoverchallenge #bookcoverchallenge #verlaine #poemes #green

 

https://www.instagram.com/p/B_yi2H5JgR8/

naoya matsumoto on Instagram: “#7日間ブックカバーチャレンジ #立夏 なので2日目は夏らしい本を選んでみました。 明治末期から昭和初期にかけて雑誌「ホトトギス」に掲載されたなかから高濱虚子が精選して編んだアンソロジー。 なかなか手に入りにくく、長らく春の部しか持っていませんでしたが、先日ようやく夏と冬を。…”

 

#7日間ブックカバーチャレンジ
#立夏 なので2日目は夏らしい本を選んでみました。

ホトトギス雑詠選集 夏』
明治末期から昭和初期にかけて雑誌「ホトトギス」に掲載されたなかから高濱虚子が精選して編んだアンソロジー
なかなか手に入りにくく、長らく春の部しか持っていませんでしたが、先日ようやく夏と冬を。
季題別で掲載年順に無造作に並んでいますが、偶然隣り合わせになった句どうしが響き合いこだましあう。アンソロジーの醍醐味です。
やがてホトトギスから離れることになる秋櫻子や誓子や草田男をはじめとする有名な俳人の有名な句と、無名の俳人たちの無名の句(私が知らないだけかもしれないけれど💦)が、なかよく並んでいるのもよい。
目に止まったのをいくつか

産み細りせし吾いとし更衣(椋みづな)
泣きやめばみめよき子なりゆすら梅(風間八桂)
目にのこる夢のひとふし髪洗ふ(桜井節子)

#7daysbookcoverchallenge #俳句 #アンソロジー#読書 #ホトトギス #高濱虚子

 

https://www.instagram.com/p/B_1EBX4DfAA/

naoya matsumoto on Instagram: “No day copies yesterday, no two nights will teach what bliss is in precisely the same way, with exactly the same kisses. (Wisława…”

 

No day copies yesterday,
no two nights will teach what bliss is
in precisely the same way,
with exactly the same kisses.
(Wisława Szymborska, "Nothing Twice") 
きのうのコピーのような日など一日もなく
まったく同じふうに
まったく同じキスで
至福をもたらす夜は二つとしてなく。
ヴィスワヴァ・シンボルスカ「ふたたびはなく」) 

 

#7日間ブックカバーチャレンジ
3日目は、ポーランドの詩人ヴィスワヴァ・シンボルスカの詩集です。
この詩のように、一回きりの、偶然の、無名の個別性を、知性とユーモアを感じさせるやさしいことばで紡ぐ詩人。
大きな主語で語られる誇張にみちた一般化からはこぼれ落ちてしまう、ささやかだけれど唯一無二のものへの優しい視線。
日本語訳がいまひとつしっくりこなくて、しかたなく英訳を横に置いて読みながら、本当はポーランド語で読まなければなあと思って、少しずつ勉強していますが、発音も変化も複雑で、いっこうに上達しません。
上の詩の原文はこちら

Żaden dzień się nie powtórzy,
nie ma dwóch podobnych nocy,
dwóch tych samych pocałunków,
dwóch jednakich spojrzeń w oczy.

「キス」にあたる単語は pocałunków ポツァウンクフ
Kiss me. は Pocałuj mnie ポツァウイ ムニェ

#7daysbookcoverchallenge #wislawaszymborska
#poems #poetry #lecture #読書 #詩 #シンボルスカ

 

https://www.instagram.com/p/B_3hUVqjfPa/

naoya matsumoto’s Instagram post: “#7日間ブックカバーチャレンジ 4日目は、夢野久作の歌集。 私にはとてもまねできないような、すこし風変わりな魅力のある歌を詠むお友だちがおられて、その方が愛読していると聞いて買い求めた本です。…”

 #7日間ブックカバーチャレンジ
4日目は、夢野久作の歌集『猟奇歌』
私にはとてもまねできないような、すこし風変わりな魅力のある歌を詠むお友だちがおられて、その方が愛読していると聞いて買い求めた本です。
不穏で怪奇な表紙の絵、幻想的な異界を覗くような挿画、凝りに凝った文字のフォントも装幀も好み。
ドグラ・マグラをはじめとするグロテスクでアナーキー夢野久作の世界、そしてそれをもうひとりの夢野久作が外側から眺めてせせら笑っている、そういう世界が、短い歌のひとつひとつに凝縮されて、読むうちに背筋が寒くなるような。
「まるで崖の突端のようで、使わずにしまい続けた毒薬のよう」という編者の解説、ほんとにそのとおりだなと思います。

骸骨が
曠野をひとり辿り行く
行く手の雲に血潮したゝる

2日目に紹介したホトトギスのアンソロジーと同じ時代なのに、なんと違う世界だろう。
#7daysbookcoverchallenge #夢野久作 #短歌 #猟奇歌 #読書

 

https://www.instagram.com/p/B_6FSGQDKUd/

naoya matsumoto on Instagram: “#7日間ブックカバーチャレンジ 5日目は、アルンダティ・ロイ Arundhati Roy の『小さきものたちの神』。 . . . 本を読んで泣いたのは久しぶりでした。 図書館で日本語訳を借りて読んで、あまりにもすばらしかったので買い求めた原書がこちら。…”

#7日間ブックカバーチャレンジ

5日目は、アルンダティ・ロイ Arundhati Roy の『小さきものたちの神』。


本を読んで泣いたのは久しぶりでした。

図書館で日本語訳を借りて読んで、あまりにもすばらしかったので買い求めた原書がこちら。

少年が言葉を発しなくなったこと、少女が突然亡くなったこと、一家の離散... いくつもの謎が、時系列を前後しながらすこしずつ解きあかされ、すべてが解けたあとの最終章で回顧的に語られる、浄穢をないまぜにして流れる川のほとりでの夜の逢瀬のくだりがせつない。

明日には世界が全く変っているのであっても「また明日ね」と言って別れる二人。

足跡さえ穢れているといわれて、後ろ向きに足跡を消しながら歩かねばならない不可触の階層の男性の、浄穢の垣根をやすやすと越える大胆とすがすがしさ。それがどんなに悲劇的な結末をもたらし子どもたちに傷を残したとしても。

物語は8歳の子どもの目を通して描かれます。子どもにとっては浄穢も差別も関係なく、無邪気に境界を越えて会いに行く。会ってみれば素敵な人なのに、なぜ人は垣根を作ってしまうのだろう。

誰を愛していいか、誰を愛していけないかなどのきまりには、何の根拠もないはずなのに。

雨季の南インドの、圧倒的に豊かな自然の描写が心に残ります。

まるで英語と戯れているような、英語の文法をからかうような、ことばあそびに満ちた文体も魅力的。インドの多くの人がそうであるように、英語といくつかのインドの言語を同時に身につけている言語環境が、英語を客観的に相対化して茶化すことを可能にしているのかもしれないと思いました。

#7daysbookcoverchallenge #読書 #小説 #arundhatiroy #アルンダティロイ #reading #lecture

 

https://www.instagram.com/p/B_8rnsXDfhH/

naoya matsumoto on Instagram: “#7日間ブックカバーチャレンジ 6日目は、鈴木るみこ『パリのすみっこ』 光沢を抑えた柔らかい色調の写真、象牙色の優しい色合いの紙の美しい本です。…”

 

#7日間ブックカバーチャレンジ

6日目は、鈴木るみこ『パリのすみっこ』

光沢を抑えた柔らかい色調の写真、象牙色の優しい色合いの紙の美しい本です。

いわゆる名所案内ではなく、つい見過ごしてしまうような普段着の町のすみっこに息づく「永遠なもの」を丹念に拾い上げて書かれた、パリという憧れへのオマージュ。

印象的なのは、取材相手のふところにふかく入ってとっておきの話をひきだすやりかた、それを過不足のないことばにうつしかえるところ、そしてきらりと光る締めの一文です。

鈴木るみこさんは大学の同じ学科の同級生で、いっしょにフランス語を勉強したのでした。短い言葉を交わす程度で、あまり親しくはなかったけれど、涼しい目もとのかわいらしい方でした。一緒にフランス語劇に取り組んだことはよく覚えています。

私が進路に悩み、労働をしたくないというだけの理由で大学院進学をめざしているころ、有名な雑誌社への就職を決めていたるみこさんは、近寄れないほどまぶしい存在に映りました。

卒業後はそれきりになって。

訃報を知ったのは同窓会のメーリングリストによってでした。まぶしく若いるみこさんしか記憶になく、すぐには信じられませんでした。

雑誌社をやめてフリーになり、フランスにわたってさらに経験を積み、雑誌クウネルの創刊にかかわり、編集者として、ライターとして、多くの人々の心に残る仕事をしていたことを知ったのはそのあとのことです。

読書、物書き、庭の花、おいしいもの、鎌倉、パリ... 彼女の関心領域をたどると、私自身のそれにあまりにも近いことに驚きます。

再会していたら、どんな話をしていただろう。

るみこさんが亡くなったのは5月の今頃だったとうかがいました。

2018年5月6日を最後に途絶えたるみこさんのインスタグラムを見ながら、彼女の好きだったという庭の薔薇を飾って、本を読み返しています。

#鈴木るみこさん #鈴木るみこ #読書 #bookcoverchallenge

 

https://www.instagram.com/p/B__NByKjS_i/

naoya matsumoto on Instagram: “#7日間ブックカバーチャレンジ 7日目は、ラファエル前派の女性たちをめぐる美術論です。 画集のような大判で、図版がいっぱいあって、画質もきれい。絵にばかり目を奪われて、文章の方はあまり読んでいません💦 それでもたまに文章を読むと面白いことが書いてある。…”

 

#7日間ブックカバーチャレンジ
7日目は、ラファエル前派の女性たちをめぐる美術論 "Preraphaelite Women"です。
画集のような大判で、図版がいっぱいあって、画質もきれい。絵にばかり目を奪われて、文章の方はあまり読んでいません💦
それでもたまに文章を読むと面白いことが書いてある。
ジョン・エヴァレット・ミレイの「りんごの花」Apple Blossoms という絵(2枚目の画像)

 

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りんごの樹の下でピクニックをする女性たちの右端に場違いに置かれた鎌は、すべてを刈り取り奪い去る無慈悲な「時間」の象徴
咲き匂う花々も、若く美しい女たちも、いつかは色あせて、時間という鎌に刈り取られるだろう、ということを意味しているそうです。
そういえば中世のメメント・モリの絵では、骸骨が鎌をふるう不気味な絵柄が流行したのでした。ペストが猛威をふるい、死が身近にあった時代。
近代文明が栄えて、死亡率が下がった今も、死はひっそりと私たちの近くに身をひそめているのかもしれない。この鎌のように。

7日間おつきあいいただきありがとうございました。

#bookcoverchallenge #preraphaelite #preraphaelitewomen #janmarsh #ラファエル前派 #読書