小さき額 十二首
病める子にたべさせんとてやはらかくやはらかくうどんうすあじに煮る
あづけたる園の電話に馳せゆけば小さき額に熱さましはる
いつになくことばすくなの病める子をうしろにのせて重き自転車
病める子のつぶらまなこに甘ゆれば添ひ寝せんとてエプロンはづす
頬あかくそめて無口になれる子のからだ寄せきぬ診察待つ間
読みをへぬうちにねむりにおちにけり病める子に本読みきかすれば
をさなごはなに夢むらむまつげ濃きねむりのなかのほのかなる笑み
ニンナナンナにをさなご抱けばやはらかき髪のほのかににほひけるかも
こゑあげてをさなごわらふくちのなか繊月のごと歯の生えそむる
泣く理由わからぬままに泣きやまぬをさなごだきてくらがりにゐき
ヘアゴムにむすびもあへぬをさなごのほそくかそけき髪のかなしも
をさなごの歩幅にあはせあゆみつつともにひろへり黄の葉赤の葉