連作「江ノ電の駅」十二首
海を主題に
由比ヶ浜に夕さりくれば波のおとたかくきこえて潮みちくらし
肺腑まで海のにほひにそまりけり夏のひかりの江ノ電の駅
さねさし相模のうみの大波にさらはれしわがさんだるいづこ
材木座海岸の夏はてにけり空まふ鳶の声のきれぎれ
干るまなく恋ひやわたらむよるなみにしとどぬれつつあふよしをなみ
いにしへの遠流のみかどみましけむ波間とびかふとびうをの群れ
絶海の小島の磯のみるめなくさがしあぐねつ恋忘れ貝
紺青のいろふかみゆく沖つかた水平線のゆるやかなる弧
春あさき加太のなみまにうかぶ雛いづちゆくらむ波のまにまに
われもまた島とならむや善悪の彼岸によする波のまにまに
潮みちて孤島となりし磯辺より裳裾ぬらして子らかへりきぬ
白き帆をかかげて君のなみまよりかへりきたるを爪立ちてまつ