短歌連作「イスファハンの薔薇」十二首
ガブリエル・フォーレの同名の歌によせて
咲くためのちからたくはへ冬薔薇はかたくつぼみをとぢてねむれる
あづさゆみ春まつ庭の薔薇の芽のほのかにあかくいろづきにけり
しろたへの薔薇一輪のさきそめぬあめはれてけさつゆにぬれつつ
ひとつぶの種地におちて幾星霜いまさきにほふイスファハンの薔薇
ぬばたまのよるの園生にだきあへばたゆたひかをる白薔薇の香
つるばらに腕をさされて春ふかくわがきずあとの星座のごとし
とこしへの愛をたのまぬわが身にも薔薇さきにほふ聖五月かな
あしたさきゆふべしをるるものなれどなほうるはしきロンサールの薔薇
万蕾の薔薇ひらくあさ額ふせてたつをとめごにうしほみちくる
ひたすらに薔薇におぼれてみつをすふ蝶となりゐし思ひ寝のゆめ
こんじきのちひさき蜂の馥郁と薔薇の内部にうれひをしらず