Dolcissima Mia Vita

A Thing of Beauty is a Joy Forever

恋愛以上に濃密なかかわり 映画『ラブ・イン・ザ・ビッグ・シティ』を見る

京都の出町座で映画『ラブ・イン・ザ・ビッグ・シティ』を見てきた。

異性愛の女性と同性愛の男性という、絶対に恋愛になりえない二人のルームシェア、その関係性は、例えばヘテロ男性二人の友情とはまた違って、互いの異質さに気づき、理解し合えないにもかかわらず互いを受け入れてゆく、ある意味で恋愛以上に濃密なかかわりであるように思った。

恋愛になるとどうしても相手を束縛したり嫉妬したり、どちらかが他方を支配したりといったいびつな関係に陥りがちなのだけれど、この二人はそのような羈絆からすがすがしいほど自由だ。

自らの性的指向を誰にもカミングアウトできないまま、死を考えるところまでゆくフンスと同じくらい、「イカれた女」を演じつつ、実は親ともうまくいかず恋愛もうまくいかないジェヒもまた、道から外れた人間の孤独感を抱えていて、そんな二人だからこそ、性的指向の違いにもかかわらず、お互いを深く思いやることができるのかもしれない。

ジェヒの恋人ジソクが二人の関係に激しく嫉妬するのもわかる気がする。恋人同士以上に長く付き合い、深く支え合う二人の関係性をなんと名付けたらいいだろう。恋愛でも友情でもない、ある種の連帯と共犯の関係。

一つ一つのエピソードはどちらかというと陳腐でありふれているのだけれど、その演出の洗練と繊細、俳優たちの演技の素晴らしさで、泣いたり笑ったりの2時間だった。

キム・ゴウンが鼻にしわを寄せていたずらっぽく笑う表情が好き。彼女の扮するジェヒが婦人科で怒りと悲しみを爆発させ、そこにあった女性生殖器のプラスチックの模型を手に取って殴ろうとして、そのまま嵐のように走り去り、大泣きをしながらフンスに慰めてもらうシーンの演技が忘れがたい。付き添ってきただけなのに妊娠させた男と勘違いされて、あんたも同罪よ!と怒鳴られるフンスも、可笑しくて哀しい。

そしてなんといっても最後の結婚式のシーンが最高に良かった。フンスがお祝いの言葉を述べてから踊り出し、にこにこしながら見ていたジェヒがウェディングドレス姿のまま走り出して、一緒に踊りに加わるところ。

ウェディングドレスの裾に赤いスニーカーがちらっと見えるのは、はじめからフンスといっしょに踊るつもりで動きやすい靴にしたのかもしれないし、しとやかなドレスに身を包んでも、本当の自分、活発に動き回る自分を押さえ込むつもりはないという意思表示にも見える。


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